買い物の帰り道、路地裏に繋がる角で。
「――あの女に……」
翔平君の声がした気がした。
なるべく近づいて耳を傾ける。
「俺にもう関わるな」
僅かに怒りが混じっているようだった。
「お前にはもう一度仲間に
なってほしいんだ。あの宿敵を
倒すためにも。それにお前と俺は
親友だろ?」
多分もう一人は夏休みに、
私を襲いかかってきた男子だ。
「悠太。もうやめにしよう。
不良にハッピーエンドなんて来ねえよ」
悠太と呼ばれた男子は、
それでも食い下がる事はなかった。
「……いいや。俺はあの時言った。
正々堂々、俺と勝負しろってな。
忘れたわけじゃないよな?
今、此処には俺と翔平しかいない。
いい勝負になると思わないか?」
悠太はにやけたような声だった。
気味が悪い。
「……ああ、上等だ。
だけどこれが本当に最後の喧嘩だ。
俺が勝ったら、不良やめろよ」
音を聞いているだけなのに、
あの空間だけ凄まじいオーラが
出ている事は痛いほどに分かった。
こちらまで緊張が伝わってくる。
「……ぅらァっ!」
初めに手を出したのは翔平君だろう。
刹那、誰かが倒れた音がした。
恐らく悠太が倒れたのだろう。
「っははは!俺は不良なんて辞めねえ。
不良ほど楽しいことはねえ!!」
状況が全くわからない。
もうこっそり覗く事にした。