彼が私を離した後、私は鼓動を速めて
その家を後にしていた。
夏だからかまだ明るい空の下を歩く。
そして一人考えていた。
(なんで私、抵抗しなかったの?)
今更そんな後悔をする。
簡単に受け入れてしまっては、
軽い女と見られてしまうだろう。
それに翔平君は元ヤンだから、
女の扱いが上手いかもしれないし、
私の事を遊んでいるのかもしれない。
ああ、そう考えてしまえば、
そうとしか考えられなくなってきた。
そうだ。彼と距離を置こう。
気が変わらないうちに。
ブーッ……。
こっそりバッグの中に
入れていた携帯が小刻みに震えた。
母がお使いを頼んできたのだ。
仕方がない、受けてやろう。
というか清楚を目指している女の子が、
学校にこっそり携帯や、
財布を持っていくのは
どうかと思うのだが。