守りたいもの……それは私だ。
けれど、私はあれへ応える事に、
不安を抱いている。
関係が崩れる気がして怖かった。
｢そう、守りたいもの……｣
如月君は呟くと、考え込んだ。
｢ねぇ……卯月さん｣
そして如月君は唐突に顔をあげる。
｢好きな人とかいるの？｣
｢えっ……いないよ｣
｢萩野は？｣
｢好きじゃないよ！｣
少し大きな声を出してしまった。
慌てて口を閉じて、如月君を見た。
彼は心なしか、切ない表情だった。
そして私はゆっくり付け加える。
｢親友としては大好きだよ｣
嘘を言ったつもりはない。
如月君はそっか、と
ため息混じりに言った。
｢どんな男子がﾀｲﾌﾟなの？｣
｢うーん。やっぱり私の事を
想ってくれて、守ってくれる人かな｣
如月君は真剣に頷いた。
｢俺、とか？｣
刹那、ぎょっとした。
冗談だという事は十分分かっていたのに。
そんな私に気づいた如月君は、
申し訳なさそうに頭を掻いた。
｢ご、ごめん。冗談が通じなかったかな｣
(………私。
如月君に嫌な思いさせちゃったかも)
胸の中がもやもやした。
だけど、確かに如月君は
強そうだし浮気とかはしなさそうだ。
考えれば考えるほど、
意識してしまいそうになる。
｢……卯月さん？｣
私が何も言わなかったからか、
如月君は心配そうに覗き込んだ。
ううん、何でもないと首を振る。
――いや、首を振ろうとした。
｢きっ、如月君？｣
｢翔平でいいよ｣
突然翔平君は私を抱き寄せた。
あまりにも急すぎて、
彼の腕の中で目を見開く。
｢なっ……何？｣
翔平君はまだ私を離さない。
｢卯月さん、暖かいね。
俺にこうされるのは、嫌？｣
上から切ない声が降ってくる。
嫌、ではない。だけど恥ずかしい。
彼は少ししてすぐに私を離した。
｢ごめん。寒かったんだ｣
普通そんな理由で、
女の子を抱き寄せるだろうか？
