ようやく喝采が止んだ後、
人々は安堵の笑みを浮かべて
再び遊び始めた。
紗羅、如月君だけは
私たちに駆け寄った。
「お疲れ!一時はまじで、
どうなる事かと思っちゃったよ!」
声だけはいつもの紗羅なのに、
表情は本当に、心から安堵していた。
健太郎はあれ以来笑っていない。
視線はずっと砂浜を見つめたまま。
如月君は何故か何も言わず、
無表情で私の顔を見つめていた。
私が彼の視線に気づいて
見つめ返すと。
「あっ……卯月さん。
無事で良かったね、本当に。
でももう危ない事はしないでね」
心のこもった言葉だった。
その言葉で、改めて
自分のした事を自覚する。
「……っ!?」
突然健太郎が、私を抱き締めた。
驚く私とは違って、
紗羅は興奮しているようだった。
「……」
健太郎は何も言わず、ただ震えていた。
彼の過去を知る私は、
いつも彼が私にしてくれたように、
背中を優しく撫で続けた。
気が弱まっているのに、
筋肉だけは凄かった。
「……」
紗羅たちはまた海に行ったけれど、
如月君は其処から何度か、
私たちを見ていたようだった。
――無表情で。