ふと、私の個室のカーテンも開いた。
「ひっ……!」
そこにいたのは私が感じた、
空気通りの男の子だった。
少し年が上の不良といったところだ。
私は反射的に、すぐそこにあった
シャワーを、男の子に投げつけた。
「この、変態!はげろ!」
清楚が台無しだ。でもそんな事を
考えている暇もなかった。
「なんで退かないのよ!キモいって!」
1人にだけ集中的に
顔のあちこちを引っ掻いてやった。
なぜか男の子は無言だった。
「うっ……」
突如、紗羅がいる隣の個室から、
他の男の子の呻き声のような音が
耳に入った。
「大丈夫?文月」
この声は如月君だ。
助けに来てくれたのだろうか。
そう考える前に、私は
さっきの男の子に両手首を捕まれて。
「大人しくしてくれよ、傷付けはしない」
「如月……隣に希美が……」
嫌。放してともがいても、
男の子の力に適う事はなかった。
「お前は…………!」
如月君の驚く声がした。
「っ、翔平……」
私の手首を掴んだまま、
男の子は如月君に振り向いていた。
「その女放せよ。幾らお前でもぶん殴るぞ」
いつもの優しい如月君とは全く違う、
気が張った恐ろしく鋭い声。
「そうか。この女がお前の……。
分かったよ。今回は見逃してやる。
でも俺は昔の俺じゃない。
今度、正々堂々と勝負しろ。
俺が勝ったら、不良に戻れ。
お前が勝ったら……今度こそ縁を切る」
男の子はそれだけ吐き捨てると、
私の手を優しく放し、
他の不良たちを連れて出ていった。
怖くて胸に手を当ててしまう私に
誰よりも早く駆け寄ったのは
如月君ではなく、健太郎だった。
「希美、大丈夫か!?怪我はないか?
変な事されてないよな?
ああ、そんな辛そうな顔して……」
いつも私を慰めるように、
健太郎は私を抱き締めてくれた。
いつもの暖かい、幼馴染みの体。
何だか最近たくましくなった気がする。
その時、何となく
如月君の空気が少し変わった気がした。