「………ねえ」
授業が終わって、私は如月翔平に
自分から話しかけていた。
如月翔平は嫌味なく
私に振り向いてくれた。
健太郎も教科書を返してもらいながら、
その様子を無言で見守っていた。
「その……さっきはごめんなさい」
謝ったあと、私は如月翔平の顔を
まじまじと見てしまった。
遠くから見た時は
気づく事の出来なかった、
顔中の傷跡、ピアスの穴、赤い髪……。
またぎょっとしてしまった私に
如月翔平は呟いた。
「……怖がらないで」
彼の顔は切な気にも、
私を優しい目で見つめてくれた。
周りの容姿のせいで
気づかなかったけれど、
如月翔平の目は、とても優しそうな
目をしていた。不良らしくない目だ。
健太郎は安心したのか、
表情を緩めて如月翔平に手を差し出した。
「おーし。心を通わせたところで
俺もお前と仲良くなる義務がある!
俺は萩野健太郎。宜しくな、如月。
お前には負けねえぞ」
元気な挨拶に、如月翔平の顔も
優しく和らいだ。
「ああ、宜しく!……んで
何の勝負をするんだ?負けねえぞって」
「それはこっちの話だ!
お前とはいつか、
勝負になりそうな気がする」
「俺はもう喧嘩はしない。
あと、文月。久しぶり。
……可愛くなったな」
急に話を振られた紗羅は、
驚いていたけれど、赤面していた。
「何、その冗談!!顔だけにして!
私、あんたの事嫌いだから!」
これはまさかツンデレなのか?