3時間の国語は、ただ教科書を
読むだけだった。
如月翔平にはまだ教科書が
届いていないらしく……。
「先生、教科書がまだ来てません」
先生は少し考えるようにして、
私の方を見る。
先生と目が合う。
嫌な予感しかしなかった。
「じゃあ卯月さん。
如月と机をくっつけて
教科書を見せてあげてくれる?」
そこまでするか!?と
訴えてしまいそうだったけれど、
この先生は教科書を忘れたりすると
机をくっつけろと前から言っていた。
「あ、はい……」
震える声で返事をしてしまった。
ふと健太郎の肩がピクリと動いた。
如月翔平は私の机が隣に来るのを
待っている。沈黙を破ってくれたのは
クラスの元気な少年だ。
「先生、卯月怖がってるよ。
元ヤンだから怖いんじゃない?」
教室がまたざわめく。
ちらりと如月翔平の顔を窺うと、
寂しいような、苦しいような、
凄く複雑な表情をしていた。
恥をかかせてしまったようで、
私も自然とそんな表情になる。
健太郎が急に口を出した。
「俺が如月君に教科書を貸して、
文月と一緒に教科書を見ます」
何故か少しだけ胸がチクリと痛んだ。
何だろう、この気持ち……。
先生もその案をいいと思ったのか、
笑顔で頷いていた。
そして授業はスムーズに進む。
その途中で見た、健太郎と紗羅。
2人机をくっつけて、
なんだか恋人みたいだった。
どうして胸がちくちくと痛むのだろう。
だけどそんな意は消し去って、
私は自分の読むべきところを音読した。