授業はそのまま無事終わり、
如月翔平は服の指導をしてもらうために
先生についていっていた。
如月翔平がいなくなったのを確認すると、
ようやく私の緊張がとける。
「はあー」
「随分盛大なため息だな」
私のため息を聞いた健太郎が
笑いながらそう言った。
顔をあげて彼の表情を見ると、
さっきの笑いを含んだ声とは違って
心配するような表情をしていた。
「大丈夫だって、何かあったら
俺が全力で守るから」
守るから。そういえばこの言葉は
健太郎の口癖だ。
幼い頃から何度も耳にしている。
不思議とその言葉を聞くと
不安も和らいでたんだっけ――。
紗羅がトイレから戻ってくる。
「あいつ、遠くから見たら
結構正しい服装してるけど、
近くで見たら髪の毛とか耳とか
尋常じゃないね、マジで」
紗羅は呆れたように言った。
「誰が?」
健太郎が少しにやにやしながら聞く。
「き、如月だよ!」
何故だかほんのりと、
紗羅の頬が桃色になっていた。
「チーク塗った?」
私は本気でそう思って訊いた。
「ばっ、希美までからかわないで!」
からかったつもりはないよと言うと、
紗羅はハッとしたように赤面した。
桃色程度ではなくなってしまった。