片翼を失った少女~壊れていく願い~

「また逃げたくなったら逃げればいい。何度だって見つけ出す」

 この日から彼の態度が変わった。
 逃げ出そうとしたから、暴力でねじ伏せられるのかと思いきや、以前よりさらに優しくなった。
 口調は変わらないが、抱きしめたり、キスをしたり、ただ一つの願いーーここから出してもらえるということをを除いて、どんな願いも叶えてくれた。
 何年もそんな生活をしてそれに慣れてしまったのか、心が麻痺したのかわからないが、自らレーンのそばに寄るようになっていった。
 それを待ち望んでいたように、レーンは嬉しそうにした。
 本当に望んでいるのは外なのか中なのか、もうわからなくなっていった。
 生活に慣れるまでは夜になると泣いたり、なんとか逃げ出そうとしていた。どれも無意味だった。もがいて苦しみ続けて、自分の中で何かが失っていく感じがしていた。
 今もレーンに抱きしめられ、頭を撫でられながら、のんびりとしている。

「もっと・・・・・・」

 こんなことを昔は言わなかったのにと思いながら、求めている。

「くすっ、もっと?」

 甘えるようにすり寄ると、さらに強く抱きしめてくれる。
 居心地良くてたまらない。

「ルナ、キスしようか」

 何も言わず、双眸を閉じた。ゆっくりと重なっていく。
 一度離れたが、もう一度したいと互い抱きしめてキスを交わした。
 ここへ来てだいぶ経ったある日、なぜ誘拐したのか教えてもらった。
 記憶にないけれど、小さい頃に出会っていたらしく、そのときレーンは怪我をしていて、幼かった私は恐怖に震えながらも、必死に誰かに助けを求めに行った。
 結果、レーンは救われ、もう一度会いたいと強く思ったと言っていた。
 ここから抜け出すための鍵を求め続けていたのに、いざ見つけた途端、それを拾えないところへ自分で捨てた。
 もしも私に翼があるとしたら、それは片翼だけなのかもしれない。

「好きだよ、ルナ。君だけを・・・・・・」
「私もレーンが好き」

 レーンの背中に手をまわしながら言った。
 片翼しかないけれど、それでも好きな人のところまで飛んでいきたいという願いにいつの間にか変わっていた。
 どちらかが欠けてはいけない。二人だからこそ意味がある。
 時間がどれだけ経とうと関係ない。今日も互いを求めてやまない。