だけど、脱出する場所を見つけるのは正直困難だった。
 本当はもっと知りたいが、あまり目立つことをしていると彼に怪しまれるので、こちらは慎重に行動しなければならない。

「こっちへおいで」

 何だろうと思いながら、ゆったりとした足取りで行ってみると、綺麗に包まれた菓子をプレゼントされた。

「可愛い・・・・・・」

 普段食べている菓子と比べ物にならないくらい、高価なものだと見てすぐにわかった。

「ありがとう」

 そう言って、一つ食べてみる。
 あまりの美味しさに自然と笑みが零れる。

「気に入ってもらえて良かった。これからもたくさんあげる」

 頷いてから、もう一つ菓子を頬張った。
 少し気を許したふりをして、油断させようと思った。本当に気を許してしまわないように注意をしながら。


 誘拐されてからもうどれくらい経ったのだろう。
 ある日、レーンがこう言い出した。

「外へ連れて行ってあげる。一緒に買い物をしよう」
「本当? ありがとう」

 久々に出た外は大勢の人で賑やかだった。あちこち歩き回っていくと、奥に細い道があった。
 レーンを見ると、商品を眺めていた。今なら逃げられる。
 人混みに紛れながら、向かって行った。
 後ろはもう人で溢れていて何も見えない。腹痛を堪えながら、ひたすら細道を走って、飛び込むように地面を蹴飛ばした。

「見つけた」
「!」

 私の腕を掴んでいるのはレーンだった。

「な、どうして!?」

 蚊の鳴くような声しか出なかった。

「悪い子だね。俺から逃げられると本気で思った?」
「レーン・・・・・・」

 泣きそうになるが、唇を噛みしめて何とか堪えた。

「逃がすわけないじゃん。これでわかったでしょ?」

 小さな子どもに言い聞かすような口調だった。
 立ち尽くしていると、レーンに館へ連れ戻された。

「心配した。ルナに何かあったらどうしようって・・・・・・」

 嘘偽りが表情から見えなかった。本当に心配している。
 出てきた言葉は謝罪だった。
 思ってもみないことを耳にした。