意識が浮上して、瞼の重さを感じながら、ゆっくりと目を開けた。
 知らない場所にいることに気づき、状態を起こした。
 数刻前、ルナは買い物へ出かけていたところ、知らない男に声をかけられ、その後の記憶がない。
 ルナを連れ去ったのは知らない、自分より少し年上の男だった。
 いつの間にか知らないところへ連れ去られていた。

「ここは一体・・・・・・」

 辺りを見回すと、部屋にはベッドと椅子と机、窓くらいしかなかった。

「おはよう」
「っ!」

 はっとして、振り向くと、男が立っていた。自分と同じ黒髪で私よりも背が高かった。
 さっきの独り言をこの男にぶつけた。

「ここは俺の館だよ。俺の名前はレーン。これからよろしくね。ルナ」

 どうして名前を知っているのだろうか。
 この男とは初対面のはずだ。けど、前から私を狙っていたのなら、知っていても不思議はない。

「ここから出して」

 こんなことを言っても無駄なことはわかる。だが、一番の願いだった。
 震える声で言うと、予想通りの返事が来た。

「それじゃあ、連れてきた意味がないじゃん」
「私をどうする気なの?」

 何の目的でこんなところまで連れてきたの?

「ひどいことはしない。そんなに警戒しないで」

 警戒しないでなんて無理な話だ。
 とても誘拐したとは思えないくらい優しい眼差しだった。それを見て、ますます不安と恐怖に駆られた。
 先にあるものは監獄と言う名の絶望だった。
 きっと食事もろくに与えてもらえず、外に出ることすらできないのだろう。
 考えることは悪いことばかりで良いことなんて一つも思いつかなかった。

「食事の時間だよ。一緒に食べよう」

 私の手を引きながら、部屋を後にした。
 ショックで手を振り払う気にもなれなかった。
 何の期待もしていなかったので、目の前の豪華な食事を見て、言葉を失った。

「ほら座って」

 目の前にあるものが幻のように見えた。
 今まで食べたことがないものばかり並べられていた。
 どれもこれも美味しそうと思いながら、椅子に腰掛けた。
 空腹に負けて、そのまま口に入れかけたが、何か入っているかもしれないと思い、寸前で手を止めた。

「どうしたの? 冷めるよ?」

 そう言われても、安全なものかどうか判断することができない。