男なら♪

「信じないのか?」

「信じられません」

 師範は懐から、写真を取りだした。

「教え子だ」

「それは誰ですか?」

「格闘家の教え子だ」

「はぁ……」

 佐奈田は写真をマジマジと見た。太った青年が映っているが、服を着ているので、筋肉は見えない。

「強井象だ」

 と、師範は微笑んだ。

「強い象? 動物園にいる象のこと?」

「違う。強井と言うのが名字で象ってのが名前だ」

「はっ? 聞いたことないなあ……」

「そりゃ、強すぎて相手が怖がって対戦しないから、目立たないんだ」

「そんな変った名前なら一度くらい聞いていてもいいんだけどなぁ」

「さあ、今日は終わりだ。さっさと帰りなさい」

「これで強くなったの? うそでしょ。看板に偽りありだよ」