男なら♪

「もうちょっと、稽古しないと離れない!」

 師範は、佐奈田にスリパーホールドをかけた。

「ギョエー、わかったよ」

 佐奈田は座りこんだ。

 師範は素早く、拡声器を持ってきた

「男なら、男なら、男なら♪……」

 師範はまた、連呼した。

「何ですかそれ?」

「意味などいいから、スクワットをやれ!」

 佐奈田は言われた通りにした。 

 五分ほどして、佐奈田は仰向けに倒れた。

「もう、無理です。起きられないです」

「よく耐えた」

「体が痛くて動けません」

「男なら、男なら、男なら♪……」

 師範はこのフレーズを言うときだけ、拡声器を使うのだ。

「これで、強くなったぞ」

 と、師範は言った。

「まさか」