「待ってました」

 師範はまた外に出て、拡声器を持って帰ってきた。

「君の場合、まず肉体よりも先に精神を鍛えた方がいいだろう」

「お願いします!」

 師範は拡声器を佐奈田の耳元に向けた。

「男なら。男なら。男なら♪……」

と、師範は演歌でも歌うように言った。

「わあ。何だよこれ!」

 佐奈田は両方の耳を手でふさいだ。

「これがいいんだ」

「もういい。帰る」

 と、佐奈田はドアに向かった。

「待っちたまえ!」

 無視する佐奈田を追いかける師範だった。

「そりゃ!」

 と、師範は佐奈田の背後から飛びついた。

「離せ!」