「……翔太さん?」
豆鉄砲を打たれたかのように彼女はびっくりしていた。
でもその後、彼女はとても嬉しそうに微笑んでいた。
「何?どうかした?」
俺はだんだん結菜の名前を呼んだことが照れくさくなってきてとぼけてそう言ってみた。
「……いいえ、何でもないです。翔太さん、まだお仕事しなくちゃいけないんですよね?
私ももう帰るのでお先に失礼します!」
とまるで早口言葉を言うかのように彼女は俺に向かってそう言うと階段を下りてお店から出て行った。
俺は上から彼女が自分の見ている窓から見えなくなるまでずっと彼女の後ろ姿を見つめていた。
でもそれ以来彼女はここに来ることはなかった。

