「メールはアンジュの竹内さんからだ。明日のことで聞きたいことがあるって」

アンジュとは、雅苑が業務提携しているブライダル専用のメイクとヘアメイクの会社。竹内さんはそこで、トップアーティストとして働いている。

彼女とは何度か会ったことがあるが、私と同い年とは思えない知的で大人な女性。

蒼甫先輩と一緒にいるところをよく見かけてはいたけれど、直接連絡を取り合っていたのは初耳だ。

「いいんですか、すぐに連絡しなくても」

「今外出中だから、戻ってから連絡するってメールした」

「そうですか」

なんだかこっちを優先してもらったみたいで申し訳ないけれど、ちょっとだけ嬉しいとか思ってしまうこの気持ちってなんだ?

「気のせい?」

「なんだよ、急に」

「あ、いえ。すみません」

心の声が漏れるのは私の悪い癖。気をつけないと。

この直後。楽しみにしていた海鮮たっぷりのお好み焼きが運ばれてきて鉄板の上でジュウジュウと音を立て香ばしい香りを漂わせると、モヤッとしていた気持ちもすっかり忘れ、大口を開けてお好み焼きを頬張った。