「先輩、ごめんなさい。ここからはひとりで帰れますから、お昼食べたら先に帰ってくださいね」

蒼甫先輩は私の突然の言葉に、怪訝な顔を見せる。

「はあ? どういうことだよ? 意味わかんないんだけど」

「だって、スマホ……」

「これがどうしたって?」

手にしていたスマホを、蒼甫先輩が私の方に向けた。

「メール見てましたよね? 彼女じゃないんですか? だったら申し訳ないと思って」

「なんだ、そういうことか。いない」

「はい?」

「彼女なんて、ここ数年いない。忙しかったからな。それに……」

それに? 

途中で言うのをやめてしまった蒼甫先輩に、首をかしげる。

「いや、なんでもない」

その言い方が何かありそうで気になったが、深入りはやめた。