極上御曹司のイジワルな溺愛


息せき切らし蒼甫先輩に追いつくと、胸に手を当て息を整える。

「い、いいですか、先輩。心して中に入るように」

「なんだ、それ」

蒼甫先輩は笑っているが、部屋の中の様子を知っている私は全然笑えない。

笑うより、泣きたい気分だ。

気乗りしないままディンプルキーを差し込み鍵を開ける。大きく深呼吸すると、諦め半分でドアを開けた。

「先輩、やっぱり少しだけ待っててくだ……」

「待てない」

私を押しのけ、蒼甫先輩が部屋の中へと入っていく。でもリビングのドアを開けたところで、先輩の足が止まった。

「まあ、女の住む部屋じゃないよな。でも一週間しか住んでないからか、汚いが汚れてはいない。想定内だ」

テレビのバラエティー番組の汚部屋調査隊のような口ぶりに、ロケじゃないんだからと笑いがこみ上げる。

でももっと怒られて呆れられると思っていた私は、蒼甫先輩の表情にホッと一息ついた。