「なにか言うことは?」

腕と足を組み偉そうに座る副社長の顔は、いかにも不機嫌極まりないと言ったところか。目を細め睨む姿は、迫力満点だ。

私だって、機嫌よくないんですけど……。

でも立場が低い私は、そんなこと口が裂けても言えない。

「どうして副社長が、ここにいるんでしょうか?」

「ここは俺の実家だ。俺がいて何が悪い?」

「えぇ!? 副社長、三十歳なのにまだ実家暮らしなんですか?」

もういい歳だから、ひとり暮らししているものだと勝手に思っていた。

「つい最近実家から追い出されたお前に、そんなこと言われたくないね」

「あぁ……」

そうだった。

立場が悪くなった私は、慌てて目線を逸らす。

まあそんなことをしたって、今更何の役にも立たないけれど。

「体調の方は、どうなんだ?」

「もう大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

「まったくだ。しかもお前、重すぎ。体重どんだけあるんだよ」

た、体重って……。

キィィィー!! 

女性に、しかも三十路近い女に体重を聞くなんて失礼千万。副社長のくせに、なんて非常識な人なの!