極上御曹司のイジワルな溺愛

「あ、でも……」
「先生も言ってなかったか? 無理に動かさなければ職場以外では、もうこれは付ける必要がないって」

確かにこの前の診察で、先生はそう言っていたけれど……。

「落ち着くと言うか安心すると言うか、これは私にとって一種のお守りみたいなもので」
「ならやっぱり、これは要らないな。お守りなら、俺だけで十分だろ」

上目遣いに見る蒼甫の目は、何かを期待しているように艶がしげに揺らめいている。

「とりあえず、風呂にでも入るか」
「え?」 

こんな雰囲気になった時、いつもの蒼甫なら……と思っていたけれど、私の早合点だったみたい。

「お先にどうぞ」

と蒼甫の膝の上から立ち上がり、彼から一歩離れようとした私の腕が、大きな手に掴まれる。

「お先にって、どういうことだよ。ふたりで入るに決まってるだろ」

蒼甫は当たり前だと言うようにニヤリと笑い、私の体を軽々と抱き上げる。

お姫様抱っこは初めてじゃないけれど、その高さに「キャッ!」と声を上げると蒼甫の体に抱きついた。

「その気になったのか?」
「その気も何も、いきなり抱き上げられたら普通驚くでしょ? 蒼甫はどうしていつも、そう自分勝手なの!?」
「相手が椛だからだろうな」

何の迷いもなく、さも当たり前のようにそう言い放ち、だから仕方がないと高笑いする蒼甫を見て、諦めの溜息をつく。