「でも私はやっぱりMCの仕事が大好きなの。新郎新婦、ご両親、ゲスト、互いの気持ちを言葉で結ぶことができるのはMCの私だけ。私はまだ、新郎新婦が幸せになる手伝いをMCとしてやっていきたい。そう思うのは、わがままなこと?」
そう力説すると右腕で蒼甫を抱きしめ、そっとお伺いを立てた。
「いや、わがままなんかじゃない。椛は間違ったことは、何ひとつ言ってない。ここに帰る少し前に、俺が間違ってたことを痛感したよ」
帰る少し前に痛感? それって、なんのこと?
体を持ち上げ、小首を傾げて蒼甫を見つめた。
「森さんご夫妻が、さっき雅苑へ来たんだ」
「森さんご夫妻って、溝口梨加さん?」
興奮気味に聞き返すと、蒼甫に落ち着けと肩を叩かれた。
そう言われても、溝口さんのこととなれば、落ち着いていられるはずがない。
病室で意識を取り戻し中止になったと聞いたときから、ずっと気になっていた。
あんな事件が起こらなければご両親やゲストに祝福され、幸せな結婚式が挙げられたのに……。
申し訳ない気持ちが、胸いっぱいに広がって苦しくなる。
「椛が悪いわけじゃない。そんな顔するな」
「わかってはいるけど、そう簡単には……」
後から知った話だけれど、私を刺した男は溝口さんの元カノだったそう。どこからか溝口さんが結婚する話を聞いて、彼女の周りをつきまとっていたらしい。
結婚間近の彼女はこのことを誰にも話せず、ひとり悩んでいた。でも年が明けてパタッと姿を現さなくなったから、諦めてくれたんだとホッとしていたところに、あの事件が発生したということだった。
そう力説すると右腕で蒼甫を抱きしめ、そっとお伺いを立てた。
「いや、わがままなんかじゃない。椛は間違ったことは、何ひとつ言ってない。ここに帰る少し前に、俺が間違ってたことを痛感したよ」
帰る少し前に痛感? それって、なんのこと?
体を持ち上げ、小首を傾げて蒼甫を見つめた。
「森さんご夫妻が、さっき雅苑へ来たんだ」
「森さんご夫妻って、溝口梨加さん?」
興奮気味に聞き返すと、蒼甫に落ち着けと肩を叩かれた。
そう言われても、溝口さんのこととなれば、落ち着いていられるはずがない。
病室で意識を取り戻し中止になったと聞いたときから、ずっと気になっていた。
あんな事件が起こらなければご両親やゲストに祝福され、幸せな結婚式が挙げられたのに……。
申し訳ない気持ちが、胸いっぱいに広がって苦しくなる。
「椛が悪いわけじゃない。そんな顔するな」
「わかってはいるけど、そう簡単には……」
後から知った話だけれど、私を刺した男は溝口さんの元カノだったそう。どこからか溝口さんが結婚する話を聞いて、彼女の周りをつきまとっていたらしい。
結婚間近の彼女はこのことを誰にも話せず、ひとり悩んでいた。でも年が明けてパタッと姿を現さなくなったから、諦めてくれたんだとホッとしていたところに、あの事件が発生したということだった。


