極上御曹司のイジワルな溺愛

なになに、どうなったの? って、あれ? 体が動かない?

起き上がろうとしたのに、体の自由がきかない。ゆっくり目線をずらすと、自分の左腕から真っ赤なものが滴り落ちて着たのが見える。

何、これ? もしかして、血? だったりする?

とう言うことは、私、男に包丁で刺されたとか?

そう言えば、左胸の辺りがズキンと痛むような。いや、ズキンを通り越して痛苦しいかも。

だんだん目はかすみ、息が苦しくなってくる。

酸素が足りないのかなぁ、頭の中までふわんふわんしてきたよ……。

なんとなく、周りが騒がしい。あの男が、取り押さえられたのか。それなら良かった。

蒼甫先輩と溝口さんは無事?

でも私はヤバいかもしれない。体に力は入らないし、瞼も重たい。このまま天国に連れて行かれるかも。

神様は意地悪だ。せっかく蒼甫先輩と相思相愛になれたのに、付き合って数ヶ月でお別れなんて。結婚式ぐらい挙げさせてくれれば良かったのに。ってまだ、プロポーズされてないけど。

朦朧とする頭でそんなことを考えていると、誰かにグッと抱きかかえられる。わずかに残っていた気力で目を開けると、瞳に映ったのは……。

「椛っ! しっかりしろ! 俺が絶対に助けてやる!!」
「そう……す……け……」

先輩まで言うことはできず、私はそこで力尽きた。