とはいえこれ以上どうすることのできない私は、小さく溜息をつくとテーブルの上に広げていた資料とまとめた。
「お衣装や新婚旅行先は決まりましたか?」
「はい。彼女のウェディングドレス姿を見たら、早く結婚式を挙げたくなってしまって」
当たり障りのない質問をしたのに、森さんは満面の笑みを浮かべる。
「もう康生ったら……」
頬を桃色に染めて恥ずかしそうに俯く溝口さんの姿に、心の中のわだかまりが少しだけ緩和される。
「森さん溝口さん。おふたりの挙式披露宴が幸せ溢れるものになるよう、一生懸命務めさせていただきます」
「よろしくお願いします」
新郎の森さんが頭を下げると、それを見て新婦の溝口さんはふわりと微笑む。
その笑顔を見る限り、ふたりの関係に問題はなさそうだ。
挙式披露宴まで二ヶ月。
それまでにほんの少しでも、彼女の中の心配事がわかればいいんだけれど……。
でも結局答えが出ないまま、MCとしての最後の打ち合わせは終わった。