極上御曹司のイジワルな溺愛


「十一時にご予約の、お客様がいらっしゃいました」

「ありがとう」

立ち上がり身なりを整え、新郎新婦を出迎える。

「あ、里中さん。お久しぶりです」

私に気づいた新婦の溝口さんが、笑顔で駆け寄ってきた。彼女に合わせるように、新郎の森さんも溝口さんの隣に並ぶ。

「お久しぶりです。今日はわざわざご足労頂き、ありがとうございます」

ふたりを応接スペースに案内すると、沙知ちゃんが抜群のタイミングで飲み物を用意してくれた。

さすが、沙知ちゃん!

沙知ちゃんに微笑むと、ありがとうと目で合図を送る。

いい感じで話を進められそう──

ホッと胸をなでおろし、打ち合わせをするふたりの前に資料を並べた。

「本来ならMCとの打ち合わせは一回のみなんですが、おふたりの披露宴はゲストも多いですし、もう少し綿密な打ち合わせをと思いまして」

嘘も方便──

溝口さんのことが心配で……。そう言って聞き出してしまえば話は早いが、“急いては事を仕損じる”ということわざもあるように、相手に不快な思いをさせてしまっては元も子もない。