極上御曹司のイジワルな溺愛


それは私や麻奈美だけではなく、この結婚披露宴に関わるスタッフ全員の想い。

だから今日は彼女の方に重きを置いて話を進めようと、万全の準備をしてきたけれど……。

「肝心な、蒼甫先輩がいないのよねぇ」

窓から見えるのは、雨の中を傘をさして歩く人々の姿。いつ降り出したのか、アスファルトはもうかなり濡れている。

蒼甫先輩がいないことに加え天候までが、私の気持ちをドスンと重いものにしているようだ。

その蒼甫先輩は今朝から神戸の支店へウェディングスペシャルフェアの打ち合わせに行っていて、帰りは夜遅くになると聞いている。

話の進み具合では泊まりになるかもしれないから、薫さんには気をつけるようにと念を押された。

「別に私は蒼甫先輩の彼女でもなんでもないんだから、そこまで心配することないのに」

そう思いながらも、気にかけてくれるのは嬉しい。

正直なところ蒼甫先輩がいないときの薫さんは、何をしでかすかわからない。襲うことはないにしろ、ハグやキスを迫ってきたら防ぎとめる自信がない。

「もし帰ってこなかったら、今日は麻奈美のところにでも泊めてもらおうかしら」

頬杖をつきパンフレットをペラペラと捲っていると、受付の沙知ちゃんが小走りにやってきた。