でも如何せん、薫さんが一筋縄ではいかなくて。何かにつけて私に絡んでくるもんだから、その対処に苦労が耐えない。
蒼甫先輩とふたりでいることを許さないと言わんばかりにどこにでも現れるから、瞬間移動でもできるんじゃないかしらと密かに思っていたりする。
それにしてもこんな状況に、いつまで心がもつのやら……。
はあ~と深い溜息を漏らすと、麻奈美が「ふ~ん」とわざとらしい声を出す。
「その感じだと、やっと自分の気持ちに気づいたみたいね」
「いつから、わかってた?」
そう言った私の顔を、麻奈美が覗き込む。
「そうね。もう何年も前からとでも、言っておこうかしら」
麻奈美は勝ち誇ったような顔をして、私の鼻をピンと弾く。
面白くない──
思わずムッとして、顔をしかめた。
「だったら、もっと早く教えてくれれば良かったのに」
そうしたら、今とはぜんぜん違う今を過ごしていたに違いない。
でも麻奈美は呆れたように肩を竦めると、私の目を真っ直ぐに見た。


