「最新作だって兄貴が言ってた。里桜さんの作品を待ってるお客様も多いからな。早速新しいウェディングドレスがメインの、ブライダルフェアを計画しないとな」

「そうですね。模擬披露宴は任せてください」

偉そうに胸を張ってみせると、蒼甫先輩の大きな手が私の頭の上に乗せられる。

「ああ、頼むな」

今日の蒼甫先輩は、やけに優しい。普段はこんなことをするような人じゃないのに……。

と言うか。今までは職場でしか顔を合わすことがなかったし、二人っきりになることもほとんどなかった。

昨日からの急展開で、あっという間に関係性が変わってしまったような。二人っきりだと傲慢さも感じないし、やけに可愛がられている?

もしかして、蒼甫先輩も私のこと──

勝手な想像に顔が火照りだし、慌てて俯く。でもそんな私の耳に届いた蒼甫先輩の言葉は。

「さ、そろそろ夕食の準備をするか。俺の指導は厳しいからな、覚悟しておけよ」

現実は、なかなか厳しい。