「ただいまー!」
大学から急いで帰ってきたようで髪を若干乱しながら帰ってきた結子におかえりーと返した。
荷物を置いて簡易的なバッグに持ち替えてきた結子を待っていた俊輔は両手に包装された花束を二つ持った。結子はその一つを手にすれば玄関に行き靴を履いた。
「それじゃあ行こうか……」
「「いってきます」」
誰も居ない玄関に向かって声を残した二人は鍵を掛け家を後にしたのだった。
二人が向かったのは墓場だった。そして真っ直ぐにある一点を目指すように歩いていく二人は暫く無言になっていた。
そしてついに目的地の場所へと辿り着いたのだった。
「俊、お花」
二人は目的地の場所へと辿り着けば花の包装を外し古くなった花を捨てれば新しい花を飾るのだった。
そしてペットボトルに入った水を流し洗うようにすれば二人は動きを止めた。
「お父さん、お母さん、来たよ」
声を掛けたそこには二人の苗字が書かれた墓石があった。
「……今日は二人の結婚記念日だね。おめでとう」
悲しみを隠しながら墓石に笑いかける結子に、それを見ていた俊輔は気付かぬフリをするのだった。
「結婚して20年だろ。今年は去年より高い花にしたんだ。大事にしてくれよ」
「ちょっと、それは言わなくていいの」
どこか冗談混じりに話す俊輔に結子は呆れたように笑うのだった。
「あたしね、お父さんお母さんみたいな夫婦になりたい。っていってもお眼鏡に叶う相手はまだ居ないんだけどさ。まあ俊はどうか分からないけど」
「はあ?何を言ってるのか理解できないんですけど」
結子の言葉に直ぐ様反応した俊輔は若干苛立った。そんな俊輔にお構い無しに結子は続けるのだった。
「ええー、嘘ついてる。あたし知ってるんだからね。この前俊後輩の女の子に告白されたことをさ。あの俊がだよーアハハハ」
「ちょ、色々失礼だし。つか誰情報なんだよ!」
ふざけたりからかったり、そんな感じで二人は暫く両親のいる場所で会話をするのだった。

