あの後なんとか遅刻せずに学校に辿り着いた俊輔は自分の教室へと向かう。教室の前から扉に入れば自分の席へと目指す。


「おー、俊今日は遅刻してないんだなー」

 ニヤニヤと笑いながら俊輔に近寄ってきたのは、いつもつるんでいるメンバーの三人だった。不貞腐れたようにうるせーと返し鞄を机に置いた。



「そいや今日は進路提出の三回目だよな。俊もそろそろ決めんとやばいんじゃないか?」

「あー、そうだなぁ………」

「俺の親父なんか家継げ継げ煩いんだよな」

「でも大学いきたいんやろー?」

 その中で数人ハァ、と溜め息をつくのだった。


 やはりこの時期になると何処も大変だ。正直俺は進学か就職か迷っていた。仮に大学に行くとする。俺はずば抜けて頭が良いって訳ではないから奨学金を取れるか分からない。姉ちゃんは大学を行っている身、俺まで大学に行くとなれば周りに負担をかけてしまうだろう。逆に就職ならば間違いなく他県に行くだろう。何せここは田舎だからあまり良い就職先は少ないし、就職するやつらは殆どが家業に就くのが多い。それに姉ちゃんと義母さん、女二人をあの家に残していくのも心配だった。




 これは先生方も承知済みでありこの時期になっても俺だけが決まっていなかったのだった。

 後、実はこの事は未だに二人には相談をしていないのだった。








「まああれだ、我が儘を言うか言わないかの問題だな」




 俊輔の何気なく呟いた言葉は三人にはきちんと聞こえていた。



「俊ってさ、たまにあれだよな」

「あー、そーやな。うん、あれだ」

「心臓に悪いって…」


 三人がそれぞれに苦笑いを浮かべればそれと同時に担任が入ってきてそれぞれの席へと戻っていったのだった。





 教室内には担任の声が響く。
 俊輔は担任の話など聞かずにぼんやりと窓から外を眺めていたのだった。