澤は扉を開け、二人の親戚達が澤を待っていたように一斉に視線を向けた。



「芳美ちゃん、二人は何て?」

 直ぐ様詰めよってきた親友の両親の顔は不安が浮かんでいる。



「二人は両親のいる家へと帰るそうです。つまり、両家の皆さんとは暮らさないそうです」




 澤は正直に話した。己が聞き、感じたこと全てを。



「では、誰があの子達の面倒を見るの?」



 皆の言葉よりも先に健一のお母さんが澤へと問うのだった。聞かれると分かっていた私は予め用意していた返答を口に出す。






「………私がみます」

 澤のとんでもない答えに直ぐ様周りが反発した。

「何を言っているの芳美ちゃん!貴女が二人の親友であって信頼できるのは分かるわ。でも、貴女はまだ若いのよ。やっとなれた教師はどうするの?」

「そうだ。それに芳美ちゃんにはやりたいことが沢山あるだろう」



 美佐の両親の言葉に澤はグッと押し黙ってしまった。彼女は今年で二十八になる。この年になればやりたい事も沢山あった。もっともっと仕事に力を入れたいしなにより結婚をして家庭だって作りたい。

 両家の人達は内野の問題を外野の人に、ましてや自身の子供の親友の身を犠牲にしたくなかったのだ。






「私を心配する皆さんの心遣いにありがとうございます。ですが私は、結子ちゃんと俊輔君と一緒に暮らします。四人が暮らしていたあの家に帰ります」





 四人が暮らしていたあの家に……。







 背筋を伸ばし真っ直ぐ強く見据える澤の姿に両家の人達が彼女の意見に誰も反論することがなかった。





 そこで成り行きを見守っていた健一の父が澤の所へと近寄った。


「分かった。二人の答えがそうならば儂達は何も言わん。ただし、芳美ちゃんも自由がある。その時は頼りなさい。多くの人達が三人を助けるよ」




 認められた。あまりの嬉しさに私は涙がでた。そして頭を深く下げた。



「ありがとう、ございます」



「儂達はお通夜の準備に取りかかるために一旦帰らなければいけないのだが芳美ちゃんたちは…」
「もう少し此方にいます」

「分かった。あとは頼んだよ」



 両家の人達の姿が徐々に見えなくなれば澤は涙を拭い、病室へと向かったのだった。