蕾～始まりへの旅～

１ヶ月前の同窓会で久しぶりに会ってから学生時代と違うなと思ったのは、ずいぶん大人っぽく落ち着いてるなってこと。
同い年でもあたしより２年も先輩の社会人。荒波に揉まれ、成長したんだろうなぁ。人知れず初恋をした彼の面影は、同窓会以降ちょくちょく会うたびに薄れていく気がする。

たわいもない話しをして谷山と２人で過ごすこんな時間。他人から見たらカップルに思われてるんだろうなぁ。でも、あたしの中でそんな気はまったく無い。あくまで友達。それ以上の関係はいらないし、考えられない。

大学生活について話している時、くしゃみが出た。さっきかいた汗が冷えてきたみたいだ。
「俺のコーヒー飲む？」
今きたばかりのホットコーヒーを差し出しながら谷山が言った。あたしは急に黙って首を横に振った。ちょっと困ったような顔をして谷山も黙り込んだ。