「では、君の席は…窓側の一番後ろの席だ」

ゆっくりと席を目指す。

その足取りは、何かに怯えていた。
ドラマでお馴染みの、机の下から「足」が出てこないか、ヒヤヒヤしていたからだ。
幸い、「理想の人」ではなかったものの、お決まりの洗礼を受けなかった澤山。
無事席に着くと、授業の準備を始めた。


休み時間

「ねぇねぇ、どうして転校してきたの?」

「趣味、何?」

「音楽、何聴くの?」

とりあえずは人気者になる澤山。

しかし、次第に話題もなくなり、クラスの関心も、転校生から昨日のテレビの話題へと移っていった。

独りポツンと、席に座っている澤山…

それぞれ気の合う者同士集団を作り、楽しそうに話す、それぞれの仲間。

その光景が澤山には、眩しく光り輝き、羨ましく感じていた。
そしてそれは、手を伸ばしても届くことのない、遠いものであるということも。

『転校初日だから、仕方ない』

澤山は、心の中でそう呟き、言い聞かせた。