森の人

よくよく辺りを見回すと、澤山を含め、個性豊かな人が至る所に存在している。

だけど、誰がどんな格好で、どんな人と、何をしようと、街行く人々にとっては、無関係であり、日常の一部なんだろう。

しかし、もしその人達が、罪を犯して逃走中の殺人犯や、身の代金を受け取りに行く途中の誘拐犯だったら?

それでも街行く人々は、そんなものは知らない顔をして、それも景色の一部として流していく。

誰も皆、自分以外は無関心なのだ。

だから皆、心を抑えて生きているのかもしれない。
心をさらけ出したところで誰が受け入れ、包み込んでくれるだろう。

むしろ、否定され傷を負うのが、赤の他人の寄せ集めであるこの街の「掟」である。

『街は無機質で冷酷』

それは澤山の胸にも深く刻まれていた。