「す、すみません」

ドライバーに深々と頭を下げる男。

そして、汗と脂でギトギトの額をハンカチで拭きながら、足早に歩道に向かう。
それに合わせ、澤山も足早に歩道を目指す。

年齢は40歳くらいだろうか。

しかし、「この手の人」は、実年齢よりも老けて見えたりもする。

そんな男を、冷ややかな目で注目する通行人達。

「ダッサー」

嘲笑う女子高生。

その声もやはり、馬鹿でかい。

「あの、すみませーん」
「お願いしまーす」

ほんの一瞬でも「注目の的」になった中年男のもとに群がってきたのは、雑誌や新聞の記者達…
ではなく、チラシやティッシュ配り。

「はぁ…」

律儀に一つ一つ、全てを受け取る中年男。

その様を横目に、澤山は胸を撫で下ろしていた。

『あのオヤジがいなかったら、僕がああなっていたんだろう…』

チラシやティッシュ配りを断れない所なんか、自分そっくり。
同情する傍ら、自分の姿を投影し、ブルーな気持ちになった。