―ブッブー!ブッブッブー!

「えー?マジでぇー?ギャハハ!」

キーッ!キキーッ!

「…してみませんか?」

ズンズン!チャチャ!

「お願いしまーす!」


やたらクラクションを鳴らしまくる車。

馬鹿でかい声で話し、馬鹿笑いをする女子高生。

おばチャリのブレーキ音。

首を縦に振るまで、金魚のフンのように付いてくる勧誘員。

大音量で音楽をかけ、信号待ちをしている車。

ノルマ分をさばこうと必死になっているチラシ配り…。


いろんなものが行き交い、賑わう街の中。
スクランブル交差点の真ん中に澤山茂樹は立っていた。

「あれ?僕は一体?」

彼は慌てて両の手の平をみた。

『何ともない』

続いて全身を両手で探る。

が、やはり何ともない。

一瞬固まる澤山。

そしてすぐにハッとし、辺りのビルを見回す。
しかし、お目当ての物は何処にも存在しない。

考え込む澤山の耳に、

ブッブー!
パァーン!

車のクラクションが飛び込んできた。
歩行者用の信号が赤に変わり、車の通行が始まったのだ。

「死にたいんか。ボケ!」

罵声を浴びせるドライバー。

しかし、それは澤山にではなく、5メートル程後ろにいた中年の男にだった。