森の人

「そうと決まれば、早速、買い物に行きましょうよ」

手を叩き、勢い良く立ち上がる茜。

「今から?」

「善は急げ、よ」
「ほら、早く」

まだ座っている拓也の手を引っ張る。

「近くにスーパーがあるから、二人で行くといいよ」
「その間に、部屋を片付けておくから」

メモ用紙に、スーパーまでの地図を書く澤山。

「俺達のことは、気を使わなくていいよ」
「一緒に行こう」

「そうよ。私達は今から、仲良し三人組なんだから」

「仲良し三人組…」

そう呟く澤山。

その言葉の響きに、これまでにない喜びが、彼の全身に染み渡った。

「あっ、でも、ムードが盛り上がった時は、フェードアウトしてもらうからね」

「それ、淋しい〜」


その日から、三人での楽しい日々が始まった。

少人数ながらも、澤山が欲しかったもの。
今まで、遠くから眺めては羨むだけの、眩しく光り輝くものの中に、澤山は居る。


三人、ふざけ合って歩く道。
黄砂で霞んだ空を見上げる澤山は、目が痛くて泣いていた。