森の人

「ごめん、会って間もないのにこんな…」

正座して、お盆を膝の上にのせて謝る澤山。

「そんな。謝ることないよ」

「そうよ。私の方こそ、ごめん」
「ねぇ、これから毎日遊びに来てもいい?」

笑顔で言う茜。

「え?」

予想外の笑顔と言葉に驚く澤山。

「食事とか、困るでしょ?」
「夕飯、作ったげる」

嬉しくも、不安がこみあげる。

「そ、そんなの、悪いよ」

「遠慮しないで」
「それに…」

横目でチラッと拓也の顔を見る茜。

「拓也にも食べて欲しいから」

茜のその言葉に、照れて顔が赤くなる拓也。

「毒味させる気じゃないだろうな」

「ひど〜い」

そんな二人の顔は、おノロケでくずれている。
近寄りがたい、二人の世界を作っていた。

「ね?いいでしょ?」

くずれた顔を、素の笑顔に戻し、茜が言った。

「勿論。母さんも喜ぶよ」
「いつもパートから帰ってくるの遅いし」

二人の世界に、多少引いたものの、満面の笑みで澤山は答えた。