森の人

「よ、よろしく」

ぎこちなく挨拶をする澤山。
靴に履き替え、拓也の横に並んだ。

「お邪魔じゃないかな?」

「そんなことないよ」
「な?茜」

茜を見る拓也。
笑顔で頷く茜。

「ねぇ、澤山君はどうして転校してきたの?」

拓也の横から、その笑顔を覗かせる茜。

「…」
「お、親の…転勤で…」

顔を曇らせる澤山。

「どんな仕事してるの?」

茜の笑顔とは対称的に、暗い顔の澤山。
これ以上触れて欲しくないのだろう。

「…」
「家、来る?」

茜の問いには答えなかったが、何かを覚悟したような表情で言った。

「…?」

拓也と顔を見合わせる茜。

「いいの?」

「うん」


そして二人は、不思議に思いながらも、澤山の家に向け、歩きだした。