森の人

放課後

「一緒に帰ろう。澤山君」

カバンに教科書を詰め、帰宅準備をしていた澤山に、拓也が声をかけた。

「うん、いいよ」

快く返事をする澤山。

二人並び、下駄箱へ向かう。

「俺の方から誘っておいて何だけど、もう一人一緒にいい?」

「うん。いいけど」

そう言っている間に、下駄箱に着いた二人。
自分のクラスの下駄箱に行く。

と、そこに、ギャル風の女子が立っていた。

彼女は、靴に履き替え、カバンを両手に持ち、5組の誰かを待っているようだ。

「君は確か同じクラスの…」

澤山がそう言いかけた時、

「紹介するよ。こいつは彼女の茜」

靴に履き替えた拓也が、彼女の横に行き、澤山にそう紹介した。

「どうも。茜です。井田茜。よろしくね」

その瞬間、澤山の心に小さな異変が起きた。
だけど、それはまだ、本人も気付いていない。
ほんの僅かな異変だった。