森の人

翌日の昼休み

澤山は中庭のベンチに座っていた。

「澤山君」

拓也の声がした。

「あっ、藤川君」

ベンチから立ち、拓也の方に歩み寄ろうとする澤山。

「あっ、座ってていいよ」

ベンチに座り直す澤山。
その隣に拓也は座った。

「あ、あのー。き、昨日、一緒に帰ろうと思って探してたんだけど…、ぶ、部活だった?」

ぎこちない笑顔、力の入った肩。
妙な緊張に、澤山は支配されていた。

「そ、そうだったんだ。ご、ごめん…。約束があって」

澤山が放つ、妙な緊張が移った拓也。
しかし、それも束の間、

「俺、部活には入ってないんだ」
「正確には、辞めたんだけどね」

太ももに肘をつき、遠くを見つめて話し始めた。