―「う、う〜ん。こ、ここは?」

「あら〜。お目覚めのようね」

まだもうろうとする意識の中、澤山の耳に女性の声が聞こえた。
焦点の合わない目でその声の方を見る。

と、

「うわっ!」

いきなり悲鳴をあげた。

「ちょっと。失礼じゃない?人の顔を見るなり、悲鳴をあげるなんて」

「す、すみません」

そこに居たのは、ヒゲ面の…!

女?


「だって、髭剃りも何も無いんだもの、仕方ないじゃない。あ〜、ヤダ!ヤダ!こんなとこ」

「僕は一体?」

辺りを見回す澤山。

そこは建物の中であるようだが、何かが違う。

「ここは?」

少しずつ回復していく意識の中、目覚めて最初に感じた、建物の中にいる、という感覚が崩れていく。

そこは、キャンプ場等にあるロッジ風の建物。

それよりはお粗末だ。

建物というよりも小屋。

次第に明確になっていく中の様子。

ベットと思っていたのは、床一面に敷き詰められた木の葉。

それ以外何も無い。

机もない。
椅子もない。
窓もない。

唯一あるのは、大きな二枚の葉っぱで仕切られている出入口。

小屋というよりも空間。
床というよりも地面。