「ユージン、もう大丈夫よ。

ここは、安全だから、安心していいのよ。

私もいるし、お兄ちゃん達もいるから、心配いらないわ。

ゆっくり、休みなさい」

「……ママン、は?」

「サクヤがついているから大丈夫よ。

もうすぐ、ここに来るわ」

「……こわかったよ。

すごくこわくて、あしがうごかない…くらい、こわかったよ…」

「もう、大丈夫よ、ユージン。

ここは安全だから、心配しないで。

私もずっとユージンと一緒にいるから」

「ずっと…?」

「そうよ。ママンが帰ってきたら、トイレには行くかしら」


 ユージンは少しだけ笑った。


「ぼく、ずっと、ルーイがママンだとおもってた。

ママンとおんなじあたまだね。

だから、ぼく、まちがえちゃった」

「そう?声も似ていたのかしら?」

「うん、わかんない。こわかったから」


 瑠哀はもう一度ユージンの頭を撫で、額にそっとキスをした。


「もう、休みましょう。

疲れたでしょう。お休み、ユージン。

良い夢を」

「おやすみなさい、ルーイ…」


 ユージンが眠りに落ちるまで、そう長くはかからなかった。


 毛布を掛けなおし、深い寝息をしているユージンを後にする。


 すぐにスーツケースを開けて、応急処置パックを探し出す。
 今日の瑠哀は黒い長袖のカットーソを来ていたから、血糊は目立たなかった。


 おまけに、ユージンがその腕の方に寄りかかっていたので、朔也とピエールに気付かれなくて、ほっとする。