「――――ユージン!!ユージン、どこにいる」


 朔也の声だ。


 目の前の男が、チッと、舌打ちをして、背を向けて走り去って行く。



 瑠哀は力が抜けたように大きな息を吐き出していた。

 右腕がズキズキと心臓の行動に会わせて波打つのがわかる。

 腕に視線を下ろし、そこに刺さった矢に手をかけて、それを一気に引きぬいた。



『んっっ―――!』


 その激痛に顔を背け、はあ、と肩で息をする。


―――…もどら、なきゃ。


 瑠哀は駆けて来た道をまた走り戻って行く。


「ユージン。―――ユージン、ここにいるの?ユージン?」


 この道を駆け下りて行ったはずなのに―――。もう、朔也に保護されたのならいいが。


「……ママン…?」


 かすれたすすり泣きの声がして、瑠哀は木の陰にいるユージンを見つけた。


「ユージン!

ここにいたのね。無事で良かった。

無事で、本当に良かった、ユージン…」



 瑠哀は座り込んでいるユージンを抱き締めた。

 ぎゅうっと、力一杯ユージンを抱き締める。



「…こわかったよ。ぼく…こわかったよ」

「うん。もう、大丈夫よ。大丈夫」