瑠哀 ~フランスにて~

「俺は……、名前、しか、知らない―――。

何も知らない。

何も――ルイを知らない。

―――なんてことだ……!」



 ごめんなさい…、と泣いてはいなかっただろうか。


 何度も何度も、朔也に誤っていなかっただろうか。

 泣かないで欲しい、と繰り返し頼んでも、

あの大きな漆黒の瞳はただただ深い哀しみだけが映っていた。



 見詰めている朔也の姿までもはっきりと反射するほど透き通った綺麗な瞳は、

涙を流さないだけで、見つめている朔也の方が辛くなるほど哀しみが映っていた。



 なぜ、気付かなかったのだろうか。

 あんなにも哀しげに、辛そうに、瑠哀が誤っていたのに。

 なぜ、その言葉一つさえも交わす前に、一人、瑠哀を行かせてしまたのだろうか。


 あんなに哀しげに泣いていたのに―――



 グッと、握り締めた朔也の拳が激しく揺れ出してたいた。

 どこにも行きようがない自分の愚かさと、

そのあまりの憤りをどこに投げ付ければよいのか。そんな場所さえ、ありはしない。




 その絶望感を感じた朔也は、またしても何もできなかった自分があまりにも腹立たしく、

そして、あれほどまでに哀しい瞳を涙で潤せていたあの瑠哀の様子に今更になって気が付いて、

朔也は後悔してもしきれない最大の後悔をしていた―――