瑠哀 ~フランスにて~

 状況が全く理解できない指揮官のマンセンが、気まずそうに口を挟む。

 それで、朔也が少しマンセンの方を振り返り、

朔也と瑠哀を困惑して見ている指揮官に、困ったような、そんな顔をしてみせた。



「――俺の傷のことで――」

「あなたの傷?」



 それで、指揮官のマンセンがパッと朔也の背中に視線を向けた。



「彼女が、そのことで責任を感じているようで―――」



 それを説明する朔也だったが、どうにも困ったように、

そっと、瑠哀の額にキスをして慰めるようする。



「――この船には、きちんとした救護室があります。

まず、傷の手当てをすべきでしょう。

このまま放っておくよりは、ずっといい」



 それを瑠哀に言い聞かせているのか、伝えているのか、

その指揮官のマンセンに、瑠哀が、ふい、と振り返った。



 だが、言葉も出さず、ただじっとマンセンを見詰めている。

 それを見返しているマンセンも、自分に向けられるその大きな漆黒の瞳が激しく揺れ、

なぜそんなにも哀しそうに涙を溜めているのか、一瞬、言葉に詰まっていた。



「ルイ。救護室もあるから、心配はいらない。

君の手当てだって、早く済ませないと。

だから、そんな風に心配しないで」