瑠哀 ~フランスにて~

『ルイ、泣かないで。

そんな風に、泣かないで。

俺は大丈夫なんだ』

『……ごめん、なさい……。

ごめんなさい、サクヤ………』



 ごめんなさい…――と、その痛切な響きの謝罪が繰り返されて、

それ以上に苦しげに瑠哀の顔が歪んで行く。

 その大きな漆黒の瞳に大粒の涙が溢れ、ツーッと、頬にこぼれ落ちる。



 あまりに瑠哀の哀しげな様子に、胸が締めつけられるほどのその苦しげな涙に、

どうすることもできず、朔也はそっと瑠哀の額にキスをした。



『ルイ、そんな風に泣かないで。

俺は大丈夫なんだ。

こんなの、ただのかすり傷なんだよ。

だから…、そんな風に、俺の為に泣かないで、ルイ』


『…ごめん、なさい、サクヤ…。

――サクヤ……。あなたに、傷を負わせる、つもりは……。

……あぁ、ごめんなさい、サクヤ――』


『ルイ、誤らないで。

君は何も悪くない。

君のせいなんかじゃないんだ』


『…ごめ…なさ―――』



「…あの―――。なにか―――?」