瑠哀 ～フランスにて～

『ルイ…、泣かないで。

かすり傷なんだ。

俺は大丈夫だから』


『……サク、ヤ。

ごめん、なさい…。

…ごめん、なさ…―――。

傷…、ごめんなさい…―――』


『ルイ』



　朔也はそれ以上瑠哀のその哀しく揺らいだ瞳を見ていることができず、

腕を伸ばして瑠哀を抱き締めていた。



『ルイ、泣かないで。

俺は大丈夫だから。

ルイ、そんな風に泣かないでくれ』


『……ごめん、なさい……。ごめんなさ、い…、サクヤ……』


『誤らないで、ルイ。君は何も悪くないんだ』


『……ごめん、なさい………』



　そろそろ、と瑠哀の腕が朔也の背中に回され、触れるか触れないか、

ほんの少しだけ、その長い指が背中に当てられる。



　あぁ……、と胸の中で瑠哀の呟きが吐き出され、その瞳から涙が溢れ出して行く。