瑠哀 ~フランスにて~

「ルイっ」



 驚きで、一歩進みかけた朔也が大慌てで瑠哀の前に駆け寄って来た。

 心配そうに瑠哀の顔を覗きこんで、瑠哀の様子を確かめる。



「ルイ。どうしたの?傷が痛むのか?」



 瑠哀は何も言わなかった。



 ただ、その大きな瞳から溢れる涙だけが頬を伝って下に流れ落ちて行き、

朔也が心配げに見詰めているその瞳は、痛切なほどの哀しい色を移して激しく揺れていた。



「ルイ、どうしたんだ?

傷が痛むのか?」


『―――……傷……。

……傷が…。

――ごめ、んなさい……』


『ルイ、泣かないで。

こんなの、全然、大したことじゃない』


『………傷……。あぁ……ごめんなさ―――』

『ルイ、誤らないで。

君は何も悪くない。

ただのかすり傷だよ』


『……ごめ…なさ………』