瑠哀 ~フランスにて~

 目が覚めてからずっと間近にある朔也のその顔。

 今は、心から安堵している優しい微笑みを浮かべて瑠哀に笑いかける。

 ずっと安心できたその優しい微笑み。

 ずっと、瑠哀に笑いかけてくれたその微笑み。



 ケインを前に、もう逃げられない――と自分でも半ば諦めかけていた。

 サクヤが、ピエールが心配しているのは百も承知で、

もうきっと二人に会うことはできない、とその状況が差し迫っていた。



 それだけに、今こうして瑠哀の目の前に朔也がいて、

瑠哀にその優しい微笑みをみせてくれる朔也の顔を見て、

こんなにも自分は朔也とピエールと―――朔也達のことだけを考えていたのだ、

と自覚せざるを得ない。



 こんなにも、苦しいほどに、朔也に会いたかったのだ、

と今初めて自覚してしまったのかもしれなかった。



『――サクヤ…。

私、あなたに会いたかったの。

会えないだろうと思っていたから、今、あなたにもう一度会えることができて、良かった。

本当に、良かった』



 朔也は瞳を細めとても嬉しそうな笑みを浮かべ、濡れている瑠哀の髪をそっとだけ梳いて行く。



『君が無事で、良かった』

『――リチャードは?』

『うん…。自爆したよ』

『自爆?』