前から朔也と、後ろから瑠哀に挟まれて、その人影が恐々と瑠哀の方を振り返った。

 間近に寄ると、その見慣れた服装は、マーグリスの屋敷のメイドの制服であることが分かった。

 紺色の制服に、白いエプロンのような前掛けがしてあるものだ。


「あなたっ―――」


 その腕の中に毛布に包められているユージンが見えない。

 無事でいるのかも、今では確認ができない。


 さらっていた犯人がメイドであるとすぐに判断した瑠哀は、キッと厳しい目をその女に向けた。


「やっぱり、この屋敷にケインを手引きした人間がいたのね。

あんな男に手を貸すなんて、ふざけるにもほどがある。

ユージンを返しなさいっ。

このまま逃げれるとでも思っているの?」


 ジリジリと、朔也までもその女との合間を詰めだしていた。


 瑠哀は動かない。

 だが、その射抜くほどのきつく鋭い視線が女をしっかりと捕らえている。

 このまま逃がすつもりは絶対にない、という瑠哀の攻撃的な気が痛いほどに向けられていた。


「ユージンを返しなさい。

このまま逃げれるとでも思っているの?

今ここで自首するのよ。

まだ、罪は重くない。

今なら、まだ間に合うわ」